kompuriment

思い当たる節もないのに突然不登校になったり、登校の時間が来ると突然お腹などがいたくなったりと、お子さんの学校嫌い・不登校、誰にも相談できずに悩んでいる方が増えています。

今もしているクラスもあるかも知れませんが、
ひと昔前は、「欠席ゼロ〇〇日突破!」とか、
「年間無欠席者の表彰」など、当たり前の教育現場でした。

人知れず、学校に行けない(行きたくても)児童・生徒の気持ちなんて
考える状況・発想はなかったのですね。

今でこそ「フリースクール」や「自宅学習」の選択肢が
ようやく選ぶことができ、認知されるようになりましたが、
それでもまだまだ、集団生活になじめない人にとって
生きにくい世の中なのは否めません。

いつの間にか
教育を受ける権利の「義務教育」が
行かないといけない「義務」にすり替えられてしまい、誰も疑わない…。

学校に行かずとも、立派に社会人なっている方は大勢います。
逆に大学を出ても犯罪者になっている人もいるでしょう。
学びたいという目標が決まれば、学ぶ場所はどこでもいいはずです。

スクールカウンセラーの森田直樹氏が提言する「コンプリメントトレーニング」は子どもの持つ良さや価値を認めた「言葉掛け」をすることによって、自信を取り戻すきっかけづくりを目指しています。

今回は、コンプリメントトレーニングの効果や具体例トレーニングを受けるためのポイントや、子どものみならず家庭や職場への応用がきくことなど、コンプリメントについて見解を深めてみようと思います。

お子さんの不登校に悩んでおられる方やコンプリメントトレーニングを初めて知る方々に是非読んでいただきたい内容です。

「コンプリメントトレーニング」って何?

ご存知の方も多いと思いますが、「コンプリメントトレーニング」という言葉を初めて聞く人のためにも、「コンプリメント」の意味をおさらいしてみましょう。

コンプリメントの意味は

「コンプリメント(compliment)」という英語は、辞書によると下記のように説明されています。

“賛辞,お世辞; あいさつ”
引用:三省堂ウェブディクショナリー:http://urx.space/eNvW

コンプリメント トレーニングの場合は、「良い点を見つけて誉める」というニュアンスで使われると考えられます。

コンプリメントトレーニングは誰が始めたの?

「コンプリメントトレーニング」は、教師の経験を生かし現在スクールカウンセラーとして活躍している森田直樹氏が提言している方法です。

2011年に出版された著書の「不登校は1日3分の働きかけで99%解決する」(リーブル出版)は、インターネットで販売される書籍の教育部門で上位を獲得するほどの人気でした。

さらに2016年には「コンプリメントで不登校は治り、子育ての悩みは解決する: 子どもの心を育て自信の水で満たす、愛情と承認の言葉がけ」(小学館)が出版されています。

コンプリメントトレーニングは、子どもが本来持っている良さや価値を認めるところから始まります。

保護者や教師が愛情を込めた言葉掛けを毎日行えば、子どもに自信がついて不登校などの克服が期待できるトレーニング方法になります。

コンプリメントは心理学の分野でも

心理学では「ブリーフセラピー」と呼ばれる心理療法があり、この中でもコンプリメントの概念が利用されています。

ブリーフセラピーは物事の原因を突き詰めるのではなく、相手が本来持っているものをうまく活用し、肯定しながら評価を行って問題を乗り越える方法です。

相談者や家族にとって何が一番大切で役立つのかを考えながら、効果的に問題を解決していきます。

コンプリメントトレーニングが効果を発揮するのは?

それでは、コンプリメントトレーニングが実際にどのような状況で効果が出るのかご紹介します。

不登校の子どもに

子どもが不登校になる理由は多岐に渡りますが、その多くは自分に自信を無くすことが多いようです。

コンプリメントトレーニングを活用し、親や教師が適切な言葉を掛けることによって子どもが自信を取り戻す可能性を高めます。

ご紹介した森田氏の著書でも、コンプリメントトレーニングは不登校の子どもに効果があると紹介されています。

具体例やアドバイスなども詳細に書かれているため、興味のある方はぜひ一読してみてください。

発達障害の子どもに

コンプリメントトレーニングは、自閉症や多動性障害などの発達障害の子どもを支援する際にも有効と言われています。

発達障害を持つ子どもが学校や社会に適応できるよう、親や教師が毎日温かい言葉を掛けて見守ります

コンプリメントトレーニングは、医師や保健師、教師など、発達障害の専門知識を持つ人たちの指示を受けながら行うことをおすすめします。

身体症状がある子どもに

学校生活が苦痛だったり、家庭環境で葛藤を抱えていたりする場合、子どもが頭痛や腹痛、微熱などの身体症状を訴えることがあります。

子どもは気持ちをうまく言葉に表せないため、不安や緊張が身体症状となって表面に出てくるケースもあります。

このような場合にもコンプリメントトレーニングを上手く活用すれば、解決に導ける可能性があります。

子育て全般に効果的!

その他、普段の生活の中でもコンプリメントトレーニングは大変有効です。

子どもは誰でも、大好きな人に誉められて認められれば嬉しくなり、頑張ろう、挑戦してみようという気持ちになります。

自分を支えてくれる基盤があると実感すれば、子どもは自信を持ってどんどん新しい世界に踏み込んで行けます。

コンプリメントトレーニングは家庭だけでなく職場などの応用ができるので、後の項目でご紹介します。

コンプリメントトレーニングの始め方

それでは、コンプリメントトレーニングについて説明します。実際には指導者の指示や書籍の説明に従い、適切な対応を行うようにしてください。

コンプリメントトレーニングのやり方

ご紹介した森田氏によると、コンプリメントを下記のように説明しています。

“子どもの気付いていない「よさ」(リソース=資源)を、親の愛情(私は嬉しい)と承認(あなたには力がある)の言葉で気付かせること”
引用:http://urx.space/DkWH

親が子どものできることやできたことを見つけ、毎日温かい言葉掛けを行います。

子どもの「心のコップ」を常に「自信の水」で満たす点がポイントです。

“コンプリメントを日常会話のようにして、常に子どもの心を自信の水で満たせておけば大丈夫です。心のコップを育てることを意識して下さい。”

さらに、森田氏はコンプリメントトレーニングをしながら「見守る」ことも大切と説いています。

また、過干渉にせず子ども自身に任せた様々な体験も必要で、試行錯誤しながらステップアップしていく様子を認め、「心のコップが大きくなっているよ」などの言葉を掛けていきます。

コンプリメント トレーニングにおける2つの言葉

森田氏の提唱するコンプリメント トレーニングでは、柱になる2つの言葉があります。

・「~~で嬉しい」「~~してくれて嬉しい」など「愛情」を示す言葉
・「~~ですごいね」「~~できる力があるね」など「承認」を示す言葉

~~の部分は状況によって異なるため、使い分けをします。
2つの言葉はシンプルですが、毎日の継続は予想よりも大変かもしれません。

子どもと共に、親もトレーニングをして成長するという感覚で臨むことをおすすめします。

コンプリメントトレーニングの具体例

実際の言葉掛けは、子どもがやったことやできたこと親が助かったことなどに対して素直に伝えます。

「洗濯物を取り込んでくれたの?嬉しい、助かった~!」
「1人でこれができたの?すごいじゃない!」
などと、普段の生活の中の他愛もない会話から生まれる内容で良いのです。

学校や塾などで教師が言葉を掛ける場合は、「◇◇くんは、こういうことが得意だね」などと伝えます。

また、子どもが傷ついて心が疲れているような時には、
「おはよう。今日も〇〇ちゃんの顔が見られて嬉しい。」
「全部食べられた?食欲出てきたね!」
などの内容を優しく伝えるだけでも効果があります。

心地よい言葉が徐々に子どもの心を開き、良い方向へ変わって行くと考えられています。

コンプリメント ノートとは

トレーニングを行う際には、ノートに記録をつけておくとさらに効果があります。

ノートがない場合は、スケジュール手帳の端にメモする程度でも良いかもしれません。手書きが苦手な人は、スマホやパソコンに記録する方法もあります。

コンプリメント ノートに記録するのは、下記のような内容が理想です。

  • 日付(行事があれば内容)   
  • 子どもの良い点やできたこと   
  • コンプリメントとして掛けた言葉   
  • 子どもの反応   
  • 気づいたこと

トレーニングの内容を記録として残すと、後々見返した際に参考になり、向上した点や改善点を見つける手立てになります。

1ヶ月ほど記録して見直し、子どもの良い点を改めてピックアップしている人もいます。

後の項目で紹介する森田氏のスクールでは、ノートを郵送してコメントをもらうシステムがあります。

コンプリメント シャワーとは

他のメンタルヘルスの講座や保護者向けの勉強会、学校の授業などでお互いの長所を誉め合う「コンプリメント シャワー」という内容を実施することがあります。

他者とのコミュニケーションを円滑にする目的があり、多くの講座では参加者同士が実際に体験しています。
しかし、森田氏のコンプリメントトレーニングでは、下記のように説明しています。

言葉が多ければコンプリメントかと言えばNOなのです。少なくても、ポイントを押さえていればコンプリメントとなります。”

コンプリメントは大変効果がありますが、状況に応じた使い分けが必要と言えます。

コンプリメント トレーニングの注意点

トレーニングを続ける上で、いくつか注意点があります。

甘やかしではない

コンプリメントトレーニングは、常に誉めて甘やかすのではありません。あくまでも子ども自身に長所を気づかせ、自信を持たせる目的があります。

すべて受け入れるのではなく、悪いことに対しては冷静に理由を伝えましょう

すぐに結果が出なくても焦らない

親としては一刻も早く改善を試みたいところですが、子どもはそれ以上に悩み苦しんでいます。

子どもの心が開いて変化が出るまで、信頼してじっくり付き合いましょう。不安な時には、指導者や専門家に相談することをおすすめします。

親も一緒に成長する

親自身が誉めるのが苦手だったり、誉められた経験がなく育ったりした場合はトレーニングがうまくできないかもしれません。

初めは辛い時もありますが、親が一緒に成長しながら取り組むのもコンプリメントトレーニングの特徴です。

子どもを操るのは禁物

コンプリメントトレーニングを活用すると、親の都合の良いように子どもを操るケースも出てきます。

大切なのは親の自己満足ではなく、子どもの心や気持ちを重視することです。将来、自信を持って社会で生きて行けるよう働きかけましょう。

子どもに試される場合もある

ある程度調子が戻ってきた子どもは、親を試す態度に出るケースもあります。

無茶な要求は正直にできないと告げ、毅然とした態度で接することも必要です。
対応が難しい場合には、1人で悩まずに専門家に相談しましょう。

再登校で終わりではない

コンプリメントトレーニングは、身体症状が治まったり登校できたりしたら終了ではありません

将来、子どもが自分の力を信じて社会で活躍できるようサポートするのが親の役目です。
再登校が終了でなく、その後も見守る必要性があります。

コンプリメントトレーニングを参考にして

ここまで、子どもに対するコンプリメントトレーニングについて説明してきましたが、コンプリメントは子どもだけでなく家庭や職場でも応用することができます。

家庭や職場でも実践してみよう

ご紹介したように、大人でも良い点を認められ誉められれば嬉しくなります。
家庭や職場、サークルなどでも相手の長所を見つけ、さりげなく誉めたり喜んだりするのはいかがでしょうか。

コンプリメントトレーニングを応用すれば、ぎこちなかった人間関係が円滑に運ぶきっかけになるかもしれません。

ただし、明らかにお世辞のようになったり、しつこく伝えたりするのは逆効果になるので注意しましょう。

上手くできない時には相談を

中には誉めるのに慣れていない人、何を言ったら良いかわからない人もいるかもしれません。

自分の気持ちに素直になり、相手がやってくれて嬉しかったこと、助かったことなどを表現してはいかがでしょうか。

近年では、コンプリメントを指導する講座やセミナーなども開催されています。状況の改善が見込まれない時には、プロに相談するのも1つの方法です。

頑張り過ぎないことも大切

早急に結果を出したいために、焦ってしまう時もあるでしょう。しかし、人間関係や心理は複雑なので、すぐには改善できないケースもあります。

コンプリメントトレーニングに挑戦して様子を見る、また働きかけるなどのペースも良いかもしれません。

1人で頑張り過ぎると疲れることもあるため、信頼できる人に相談したり仲間を増やしたりするなど、無理をせずに進めてください。

おわりに

今回は、コンプリメントトレーニングについてお話してきました。

コンプリメントトレーニングを初めて知った方や活用しようか迷っている方へ、解決に向けてのきっかけになれば幸いです。

コンプリメントトレーニングは簡単な言葉を使ったコミュニケーションですが、内容はとても深く、間違った導き方をすると効果が出ない時もあります

ぜひ書籍を参考にし、必要であれば直接スクールに連絡を取って指示を仰いでください。

コンプリメントトレーニングを活用し、お悩みの皆さんが一歩でも前に進めるよう蔭ながら応援させていただきます。