管理人は立体造形を得意・生業としていますが、その材料の主流はFRP樹脂になります。
FRP樹脂の造形物は石膏型では一つしかできませんが、シリコン樹脂を使えば、量産ができます。
シリコン樹脂を用いた造形物にはシリコンを型にして増産していく場合と、特殊マスクなどのようにシリコン自体が造形物となるものと二通りあります。
今回は前者のシリコンを型にして増産していくワンランク上のシリコン型取り方法を紹介します。
こちらはシリコン樹脂の型により複製を作った作品例になります。
複製のためのシリコン型
塑像などの型と言えば、石膏型になりますが、石膏型は1回きり(うまく剥がせば2回くらいは作れるかも)しか使えません。
一方同じものを複数作る場合は、シリコン型が便利です。私の経験ですと一つの型から同じコピーを20数個作ったことがあります。
70cmのFRP製人形を23個作りました。
シリコンの型取り
- シリコンと硬化剤
- ガーゼ(ドラッグストアでシートタイプで売っています)
- 計量器(デジタルの計り)
- ヘラ、割り箸
- 粘土(油粘土でも可)
- 針金(12・13番線)、ペンチ
- 石膏
- FRP(ガラス繊維と樹脂)
- カッターナイフ(大)
- サンダー(研磨用)
原型を粘土で成形する
まず、顔の前半分の型を取ります。シリコンが流れないように土手を作ります。
雌型雄型をきちんと合わせるために、粘土で赤い印のようなピラミッド型の凸凹を数箇所作っておきます。
(少し大きめに作るときっちり入るでしょう。)
シリコン流し込み(一層目)
シリコンに硬化剤を入れ、割り箸などで良くかき混ぜて、高い部分から流し込んでいきます。
第一層目は薄くても空気が入らないようにすればOKです。
硬化時間を考えると大きさにもよりますが、100gずつ小分けして作業した方があせらずに早くできます。多くて150gが限度。
硬化剤の量は注意してください。(少ないと硬化が遅く作業が遅れます。)
シリコンのメーカーにより異なると思いますが、100g(紙コップ6分目)に対して20滴がベストだと思います。
20滴は数えていくうちにわからなくなるので、5滴ずつ落として、コップを少し回しまた5滴と4回繰り返すと間違いなく20滴になります。
シリコンとガーゼの積層・張り込み(二層目以降)
一層目を指でつついて、固まっていたら(ちょっとベタベタする状態で)二層目を流し込みます。ガーゼはシリコンの補強材と厚みをつける役割があります。数センチ角に切ったガーゼを重ねながら張り込んでいきます。(ガーゼの写真がないので、イラストで表現しています。青い部分がガーゼの重なり加減。実際は白色)
ガーゼは3・4層にすると、ムラがなくなり、分厚くなり、強度も増します。5mmくらいシリコンの厚みになれば理想です。
ガーゼがめくれたり、空気が入らないように。全てのガーゼが敷き詰め、その上からシリコンが浸透していけばOKです。二層目はヘラを使ってシリコンを広げてもOKです。
今回前面、後面合わせて、2kgのシリコンを使いました。
石膏型の作り方
シリコン型だけでは、腰がなくふにゃふにゃなので、シリコン型の外側を石膏型で覆い、補強します。
針金の位置
大きさにもよりますが、石膏だけではもろいのでスタッフ(麻の繊維)を混ぜたり、手間がかかりますが12番線くらいの針金をペンチで曲げながら、細かく形に合わせて重ねていき石膏と絡めていきます。
石膏は固まりやすいので、無理をせずにボウル半分くらいに固めに作ると作業が早いでしょう。
石膏はボール(ラバーボールが適)に半分位水を入れ、パラパラと水の高さまで石膏を入れ、余ったうわ水は捨てます。(排水口に捨てると詰まるので注意)混ぜすぎると早く固まりすぎて、捨てることになります。混ぜたり、塗ったりする道具はヘラかステーキナイフで行います。
これで、顔の前面の型ができました。反対にして、粘土で作った土手を取って、後ろ反面の型を同じ要領で取っていきます。
シリコン型の完成(違うマスクの写真)
その石膏型の完成
FRP成形(積層)
シリコン型と石膏型を重ね合わせ、それぞれの型にFRPを積層していきます。
FRPは硬化剤を入れると有毒の臭が発生するので、必ず防毒マスクを着用して作業してください。
マスクをしていても頭痛が残るくらい強烈です。
写真にはありませんが、半分ずつガラス繊維と樹脂を積層し、接合部分のはみ出した繊維は固まり次第カッターできれいに除去します。
カッターで切る作業が遅くなると固くなり手こずります。
固くなり過ぎたらベビーサンダー(鉄筋を切るグラインダー)で削ります。
FRPの接合
雄型、雌型と合わせてピッタリ合えば接合準備完了です。
それぞれの淵にFRP樹脂とタンカルを混ぜたものを盛り付け、型を合体して針金などで数箇所固定します。
ジョイントの内側にはガラス繊維とFRP樹脂を積層して接合部を完全に一つにします。
FRP接合部の補修
固まったら、石膏型、シリコン型の順番で型を外すと、中から繋がったマスクが出てきます。
接合部の余計なバリなどを柔らかいうちに削り、必要であればボディパテで補修し、研磨します。
ボディパテは車用でOK
研磨は耐水ペーパーか、電動・コンプレッサー用サンダーか研磨用グラインダーがあれば楽です。
粉塵を吸い込まないようにマスクを。
ウレタン塗装などして、完成です。
シリコン 型(張り込み式)による FRP製品の複製のまとめ
今日ご紹介したのは、美術作品や模型などFRP製品の張り込み式のシリコンでの型取り方法でした。
次回はエポキシ樹脂やリジンなどでも流し込みをしてみたいと思います。
人体のシリコン取りはしたことがないのですが、人体を型取りする場合は「アルジネート」などを使うと早く型取りできるみたいです。
ゴムマスクや特殊メイク製作には 「フォームラテックス」(造形用の液体ラテックスゴム)があります。
シリコン型が作れるようになれば、ジオラマの人物、乗り物などの複製や、マスク、被り物など、さまざまなオリジナルの造形物の複製が作れるようになります。
このブログでは量の表記ができませんでしたが、シリコンは決して安い材料ではないので、最初は少量で試しながら徐々に慣れていきましょう。
アクセサリーを製作してyourブランドを世界に発信
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