この記事ではFRP造形・彫刻に関心がある方に「塑像」「石膏取り」「FRP積層」「彩色」から「設置」までFRP彫刻の作り方を解説してまいります。
今回の作品は屋外で台風対策に基づいて強固に作ったので、鉄筋の溶接などが入っていますが、必要なければ飛ばし読みしてください。
これから彫刻や立体造形物をFRPで作ってみようという方の参考になれば幸いです。
今回設置した彫刻
ちなみにFRPとは、Fiber Reinforced Plastics(ファイバー・レインフォースド・プラスチック)の略で、船をはじめ、遊具、防水材、自動車のバンパー、バイクのカウルなどの造形物に使用されます。
今回はガラス繊維を用いたGlass Fiber Reinforced Plastics(GFRP)になります。
ガラス繊維に対してカーボン繊維を積層するやり方があります。(やったことがありません。謝)
尚、途中欲しい材料がありましたら、一応最安値をいつも探して購入してます。
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FRP製作に必要な材料
使用頻度の多い順に
・不飽和ポリエステル樹脂15kg缶(7000円前後;時価)を2缶
低収縮タイプFRP不飽和ポリエステル樹脂 15kg 一般積層用(インパラフィン)ノンパラはベタベタするのでNG
・FRP用硬化剤500ml 1缶 1,259円
・促進剤もあると硬化の時間調節ができる。数百円
・FRP成型用ガラスマット:#380 30kg 72m 価格(税込)10,390円 切り売りあり 1m単価約122円
・アセトン:樹脂を薄めたり、固まるのを防ぐ
・アエロジル:厚みを増す時やたれ止めに使用します。 FRP樹脂に2%程度混ぜて、増粘剤として使用します。高価。入れすぎると、ダマになる。
・タンカル:こちらも増粘剤。厚みを増す時に使用。安価でなかなか減らない。地面のべたつき防止にも良い。
・離型剤:リンレイ rinrei リンレイ 油性ワックス 液状 ブルー 1L【wtnup】←これ重要です。
不飽和ポリエステル樹脂
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FRP
ポリエチレン樹脂はインパラフィンが積層向きです。(表面がベタベタしない)いつも使っている最安の会社です。
FRPは温度により、すぐ硬化しますので、刷毛はアセトンの液で洗いながら、作業を続けます。
夏でも促進剤を少し入れると硬化が早まります。
促進剤(コバルト)も忘れずに。1缶100mlくらい買っておくのがおすすめ。
特に冬場は促進剤がないと一向に固まりません。
数滴でもコバルトを入れると、硬化が早まり、次の作業に進むことができます。
なお、2022.12月現在、価格は高騰しています。
タルク
厚みをつけるには「タルク」を入れます。
タルクを加えることで、いわゆる「ポリパテ」になります。
タルクはさらさらしていて、すぐにポリエステル樹脂となじみます。
炭酸カルシウム(タンカル)と同一と思っていましたが、別物。
タンカルは粘りが強く、ダマになりやすいので、タルクをおすすめします。
アロエジル:たれ止め剤
アロエジル:たれ止め剤で厚みがでます。
ダマにならないように攪拌しておいておく
必要な分だけ硬化剤を入れて使用。
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石膏(焼き石膏)
・石膏:20kg・小袋が安くて無駄なし
最安値もピンからキリの値段です。型取り用は最高級でなくてもOK
倍近く値上がりしています。
【石膏・せっこう】20kg 美術・工芸・型取り用に最適!RHS700
・スタッフ:石膏型を木材で補強する時に使う麻繊維。10cmくらいに切って水につけておく
石膏は残ると、かぜをひいて(水分を吸収して)固まらなくなるので、小袋が便利です。
少量の場合は、4kg入りの小袋が無駄がありません。
近くのホームセンターでも購入できます。
石膏の最安値です。
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離型剤
離型剤は「カリ石鹸」「液体せっけん」色々試しましたが、
「リンレイ 油性ワックス」の刷毛での2度塗りがベストです。
固まっていたら、湯煎してください。
ただし、油分が強いので、離形した面を中性洗剤をつけてたわし(亀の子たわし)で洗う作業が必要になります。
※塗装を剥離させないために、十分に研磨したり、下地材(ミッチャクロンマルチ)の塗布が必要です。
粘土・油土・軽量油土
・軽量油土:(土粘土の方が断然安い)1kg300円~500円
通常、塑像を作る場合は土粘土ですが、大きな作品とか縦に長い作品の場合は乾燥・ひび割れ・脱落に悩まされます。
寒い冬には凍結もあります。
考えたあげく、軽量の油土を大量に購入しました。事前に工場に連絡すれば大きな塊もできるとか。
時期もあるらしく、1kgの袋を70個くらい開けました。
2.5mの立像を作ってもヒビすら入らずに無事完成することができました。
注意点は手が油でベタベタすることと、石膏を塗る時に弾くのが難点。
その他
・鉄筋・針金:補強用に溶接(今回外部設置・台風対策で)
・切金:石膏取りの時に型を分割するための真鍮の薄板
ロールになっているので、1.5cmくらいの幅、5cmの長さに切っておきます。
・塗料:下地プライマー(ミッチャクロンマルチ)
上塗り:油性フッ素系塗料
ウレタン塗料・ウレタンフラットベース艶消し
・コンクリート:0.1リューベ。1m×1m×10cm(外部設置用)
砂、砂利、セメント、水を混ぜ合わせます。
道具
道具は作る人によって様々です。
決まりはありませんが、自分が持っていて使い慣れたものがいいでしょう。
容器など消耗品はドリンクのリサイクル容器で代用するとお金もかからず、固まったら使い捨てもできます。
粘土成形用
・ゴムのハンマー:芯材に叩いて固定していく(無ければ角材)
・ヘラ:竹べら、木べら、洋食ナイフなど
石膏取り用
・石膏を溶く容器:ラバーボールがベスト
・バケツ2個:水入れ用とボールや筆の洗い用
・ヘラ:石膏を混ぜたり、塗りつけていく金属ヘラ(FRP用と兼ねる)
・ペンチ:石膏型の強度を高めるための針金(8番~10番線)を曲げる
・針金カッター:8番~10番線を切る
・オタマ:石膏を袋からすくう
FRP用
・容器:焼酎の紙箱がベストです。再利用なので、ただです。
カッターで切って内部を布でふき、乾燥させておきます。
・安い水性刷毛(樹脂塗り・染み込ませ用)2・3本アセトンに漬けてこまめにきれいにいていれば長持ちします。
・混ぜるヘラ:塗装用平ヘラ
・ヘラと刷毛をアセトンに漬ける容器(2リットルのペットボトルを切ったもの)蒸発するので必ずポリ袋で密封すること。
・混ぜる容器(1,8Lの焼酎の空き箱を半分に切ったものが一番良い。ラバーボウルもありますが。)
・グラインダー:刃を変えて切ったり・磨きに使用。2つあるといちいち付け替え無くて済む
・防毒マスク:必需です。しないと頭が痛くなります。
原型制作:塑像
今回の彫刻の原型づくりは大学時代に習った「塑像」という方法です。
塑像(そぞう)とは、粘土など、可塑 (かそ) 性のある材料を用いて造った像です。
粘土で造形し、石膏型を作り、最終的に
石膏像にするか、FRP像にするか、ブロンズ像にするかに分かれます。
塑像に対して、石彫、木彫、鉄・ステンなどの造形物・焼き物(テラコッタ)などがあります。
土台と芯材づくり
木材の土台にウレタンに芯材を縛り付けます。
油粘土が食いつきやすいよう(落ちないように)、園芸用のプラスティク網を表面に張りました。
※人体の場合は木材・針金とシュロ縄などで芯材を作ります。腰の部分を後ろから鉄骨で支えます。
※ちなみに今回は使用していませんが、
回転台は市販されていないので、「マワール」という回転輪を購入して組み合わせて作りました。
粘土・石膏型と100kg以上の重さにもつように頑丈に作ります。マワール様様です。
回転台マワール エコノミータイプ ピンク 500kg 直径800mm PTE80
粘土で肉付け
ゴムハンマーや角材でたたきながら粘土を芯材に固定していきます。
通常の水粘土の場合、乾燥しないように霧吹きで水をかけないと乾燥・収縮します。
だいぶ形が整ってきました。
今回は具象ではなく、抽象で女性の顔を彫刻にしていきます。
植物の蔓みたいにスケルトンにしてきます。
これで粘土による成形は終わりです。
石膏取り
石膏は重いので、下から行います。
通常、水粘土の場合は石膏を水に溶きかき混ぜ、ゆるゆるになったところで刷毛でぴしゃぴしゃとテンポよく粘土にかけていきます。
今回は油粘土なので、だらだらと落ちてくるので、ヘラで粘土を触らないように下から塗り重ねていきました。
最低5mmベストは8mmくらいの厚みが無駄なく強固な型になります。
できれば、初めに数ミリ薄い石膏を塗った後に四方を針金を張り巡らせて
更に数ミリ石膏で塗り固めるのがいいでしょう。
切金を入れて石膏取りです。
切金を1cmくらい粘土から出して連結していきます。
切金は型を分離するのに重要な工程です。
型が分離できないと、重くなり割れやすくなります。粘土も取り出しにくくなります。
かと言ってあまりに分割しすぎると、どこの型かわからなくなって手間が増えます。
8番線で型の周囲・中を補強
型の四隅と中にも針金の8(10)番線をペンチで曲げながら入れ、石膏で覆います。
これを上手くやらないと型がバラバラに壊れてしまいます。
番線で補強したら、更に木材を井桁にして補強し、持ちやすくします。
石膏と水と洗い用バケツ、右が補強用針金
木材は水に濡らしスタッフを石膏に混ぜて固定していきます。
全ての補強が出来上がりました。
型はずし
油粘土・芯材を慎重に外していきます。
水粘土の場合は型の隙間から水を少しずつ流して柔らかくすると型が取れやすいです。
油粘土はそれができないので、上手く型の分割をしないといけません。
今回は半分でしたので、裏から取ることができました。
それでも一つの型が大きかったですね。
全ての石膏型の出来上がり
(水粘土の場合は水と刷毛で型を洗います。)
FRP工程
離型:離形剤塗り
石膏型からFRPが抜けやすくするために離型剤を刷毛で塗ります。
離型剤は「リンレイの床用油性ワックス」がベストです。
過去、カリ石鹸、ブルーの離型剤、固形ワックス、手洗い用液体せっけんと
いろいろ試しましたが、床用油性ワックスが一番離形が上手くいきました。
色が付いているので、どこまで塗ったかも一目です。
2度塗りがおすすめ。サクッと離形できます。
FRP積層
FRP樹脂が固まる直前に有毒なガスを発生させるので、吸わないように必ず防毒マスクを使用してください。
防毒マスクはホームセンターでも売っています。シゲマツが有名。詰め替え用もあり。
マスクをしても、気分が悪くなったり、頭が痛くなる場合があります。
風通しの良いところで、風向きを考慮の上作業をおすすめします。
FRPの磨きはコンプレッサーの研磨機で行いましたが、ベルトサンダーや手作業でもOKだと思います。納得がいくまで磨くという根気が必要になります。
また、塗装時もウレタン塗装はニオイがきつく、体にもよくないので、防毒マスクを使用してください。
いよいよFRPを型に積層していきます。
有害なので必ず防毒マスクをして行います。
張り込み1:樹脂(たれ止め材などを混ぜた)のみを塗る
型にポリエステル樹脂を塗りますが、そのままだと被膜が薄いのでタンカルかアエロジルを混ぜたものを塗ります。
ぼくはアエロジルとポリエステル樹脂とタンカルをバケツによく混ぜておきます。アエロジルがない場合はタンカルだけでもOK。
1回目の塗りはこの混ぜたダボダボの液に硬化剤を入れてよく混ぜ、刷毛で一気に塗っていきます。
季節にもよりますが、急速に固まるときは硬化剤の量を減らすか、作る量を減らしてください。
逆に冬場など全然固まらずに作業が進まない場合は、紫色の促進剤を入れるといいでしょう。
張り込み2:樹脂とガラス繊維を積層していく
ガラス繊維を積層する場合もアエロジル・タンカル入りの樹脂を一度塗ってから、ガラス繊維を敷き、
その上からポリエステル樹脂のみ(硬化剤入れ)を刷毛で空気を抜きながら染み込ませていきます。
ガラス繊維は重ねて敷き詰め、目的の用途に合わせて積層させていきます。
通常、最低でも2、3枚~4,5枚は積層して5mm程度の厚みにすると強度が出るでしょう。
ガラス繊維がチクチクと体に入り込み、マスクをしながらの作業は根気がいりますが、ここががんじんな工程なので頑張りましょう!
FRP積層の作業
手前にあるのが焼酎の紙の容器、この中で樹脂と硬化剤を混ぜていきます。
ポイントはアエロジル・タンカル入りの樹脂を一度塗る
その上にガラス繊維を敷いて、ポリエステル樹脂のみを塗る
あとは、またガラス繊維を敷いて、ポリエステル樹脂のみを塗るの繰り返し。
硬化剤はいずれも塗る直前に入れること。
石膏型外し
石膏型を外します。外すより割る感じです。
離型剤のおかげできれいに取れました。
針金・番線は石膏を取り伸ばして再利用します。
FRP連結
顔の部分は3つの型からそれぞれ外したFRPを針金で連結させます。(緑の部分)
上手く連結できたら後ろからガラス繊維と樹脂で完全に連結します。
はみ出したバリなど軟らかいうちにカッターで切っておくと後が楽です。
固くなってたら、サンダーで切ります。
土台との連結(土台には外部用なので溶接した鉄骨を固定している)
通常は、FRPの積層だけで十分だと思います。
鉄板を敷いて鉄筋を溶接(これも通常いらない工程)
裏面に樹脂とガラス繊維を積層して鉄筋を隠します。
穴が開いたところは樹脂を埋め、全体をサンダーで磨きます。
裏面も出っ張りなどサンダーで磨いてFRPの工程は終了です。
塗装
いよいよ仕上げの塗装です。
下地塗り
「ミッチャクロンマルチ」という下地プライマー剤をガン吹きします。
コンプレッサー&ガンがなければ刷毛塗りでOK。
上塗り
今回使用したのは、油性フッ素系塗料のこげ茶とカーキー色と
仕上げに艶消し(ウレタンフラットベース)ウレタン黒をドライブラシィングしました。
3回ガン吹き&刷毛塗りしたので10年くらいは持つと思います。
設置
基礎づくりの道具と材料を軽トラに積み込んで、いざ出発。
とある島の朝日が見えるところに設置完了しました。
長文にお付き合いくださりありがとうございました。
尚、他の造形工程もありますので、お時間があるときにご覧ください。
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