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当工房はモニュメント・看板制作などの仕事上、足場を依頼することがあります。

鳶職の方々は奇抜な服装など見た目とは裏腹に、俊敏な動きと体力、バランス感覚などを持ち合わしており、その仕事ぶりと速さには感動とギャップを覚えます。

一つ気になるのが、独特のズボンの形です。

ケチをつける訳ではありませんが、どうしてあんなにダボダボのズボンをみなさん履いているのでしょうか?
彼らの共通のおしゃれアイテムなのでしょうか?

今日はとび職の方々が、通称「ニッカポッカ」のダボダボのズボンを履く理由と、その独特の名前の由来など「ニッカポッカ」に秘められた謎を探りたいと思います。



「ニッカポッカ」の由来は?

名前の由来は、Knicker bockers(ニッカボッカーズ)「ひざの下でくくる、ゆったりとしたズボン」の略語になります。

ニューヨークに住むオランダ人移民者についての本『ニューヨークの歴史』を書いた人のペンネームがいつの間にかニューヨークのオランダ人移民とその子孫のことに、ついにはその挿絵にあった短ズボンのことをニッカーボッカーと呼ぶようになったということです。

ニッカポッカーズ

ニッカポッカーズ

ニッカボッカーズはズボンの一種で、野球・ゴルフ・乗馬・自転車・登山などのスポーツウェアとして広まり、現在日本では土木・建設工事の作業服として多く見られる。

ニッカ(ー)ボッカー(ズ)、ニッカポッカ、ニッカズボン、ニッカー(ズ)とも呼ばれる。

ウィキペディアより抜粋

どうやら移民時代にヨーロッパ(オランダ・イギリス)からアメリカ、そして日本に伝わったファッションのようですね。

ニューヨーカー・ニッカボッカーズ、やはりアメリカ生まれのおしゃれなズボンだったのですね。

「ニッカポッカ」の独特のフォルム

ニッカポッカ

「ニッカポッカ」は七分丈のもの、足首まで垂れているものなど様々な形状がありますが、基本は機能性と安全性のために膝・太ももの部分に膨らみを持たせています。

この「ふくらみ」に仕事上のヒントが隠れている感じがしますね。

ニューヨークのファッションがどういういきさつで日本の土木の作業服になったのでしょうか?

「ニッカポッカ」のダボダボの理由とは?

「ニッカポッカ」のダボダボな形には機能的な意味がありました。

とび職の現場は高所にあり、足場は狭くて細いところばかりです。

そんな場所で立ったりしゃがんだり、足場を上に上がったり、降りたりと股を大きく開くことが頻繁にあります。

汗をかくと通常の作業ズボンですと汗で膝が突っ張って曲げにく抜くくなるものですが、「ニッカポッカ」のダボダボの膨らみは膝をどんなに曲げても、しゃがんでもつっぱらないため動きが非常に楽になります。

「ニッカポッカ」はそんな動作が無理なくできるように膨らみを持たせた設計になっているのですね。

中には特殊加工してオリジナルの膨らみのを特注で仕立てているおしゃれな職人さんもいるみたいです。

もう一つの理由はレーダーの役割。

ダボダボの部分に木材などがひっかかり、事前にキケンを察知するためという意見もあります。

ヘルメットもそうですが、自分の頭より数センチ大きいだけで、頭上の足場などに激突してしまいます。

確かにきっちりした服では、猫のひげみたいに色んな情報を感知することができないかも知れませんね。

あと、皮膚とズボンの間に隙間が空くことで、溶接の火の粉の熱やペンキの浸透が直接肌に影響しないという優れた機能性も兼ね備えているようです。




ニッカボッカに似た だぶ付いた着物

ニッカボッカーズはスタイリッシュと機能性から様々なコスチュームに応用され日本に広まりました。

軍服

ニッカポッカ=ダボ付いたズボンは作業着に限らず、騎馬隊の乗馬服、軍服、ゴルフウェアなどのスポーツウェア、などにも使われています。

日本の歴史をさかのぼると、ニッカポッカそっくりのダブダブの服があるではありませんか?

羽織はかま

公家が来ていた装束がまさに膨らんだズボンと言っていいでしょう。陰陽師などもこのような俊敏性の高い服装で映画のように闘っていたのでしょうか?

独特すぎるファッション「ニッカポッカ」のまとめ

欧米から伝わってきた「ニッカボッカーズ」は現在でも存在し、七分丈のズボンなどスマートな形で今も尚愛され、販売されています。

一方、「日本に古来からある袴の機能性」と「独特な形というファッション性」とをミックスさせ、現在とび職人が愛する「ニッカポッカ」として進化し、誕生したのではないかと推測します。

その形が独特でユニークな「ニッカポッカ」にはこのような由来と、形が持つ意味や利便性・機能性があることが分かりました。

インターネットビジネス化、機械化が進む中、職人不足が危惧されていますが、鳶職の方々はこの「ニッカポッカ」を無意識のうちに一種の広告手段として使用しているのかも。あるいは職人気質・自己主張の理由もあるかもしれません。

とにかく現代の「ニッカポッカ」は仲間・職業意識と更なるファッションの追求、職人の技の伝承にも一躍を担っているように思います。

「ニッカポッカ」を着て、これからも安全に、快適に職務に励んで行って欲しいと思います。

ちなみに余談ですが、缶コーヒーで有名な「ポッカコーポレーション」のポッカの由来も、当時流行りだしたゴルフの「ニッカボッカ」をもじったということです。