「キモイ」「マジ」「ウザイ」などのいわゆる若者言葉は聴く人に悪い印象を与え、差別やいじめのを生み出す「言葉が持つ危険性」のある言葉も広く出回っていますね。
言葉は口から出た瞬間に人を傷つけてしまいます。「言霊」といって言葉一つによってまさにトラブルの元となるので、意味を理解し、理解して使用したいものです。
一見するとマイナスの言葉なのに、言葉の持つイメージが一変した言葉も出てきました。
その言葉は「やばい」という言葉です。
元々トラブル時に使うマイナスの言葉なのに、どうも近年若い人によって使い方が変わり、意味が変化してきました。
その証として2018年の1月に10年ぶりに発刊された広辞苑の中にもこの「やばい」という言葉が登場しました。
広辞苑によると、選考理由はその時の流行ではなく、幅広い世代に定着しているかどうかを10年スパンで見直した結果だそうです。
今日は「やばい」のもつ意味や語源について調べてみました。言葉の持つ影響力について考えてみましょう!!
やばいの意味は
「やばい」を国語辞典で調べてみると
「都合が悪い」、「危ない」「良くない」「非常にまずい状態に陥っている」と元の意味が書かれています。
ところが、近年テレビなどで耳にする「やばい」は「衝撃を受けるほどおいしい!」とか「予想外の衝撃でどうにかなってしまうくらい凄い!」といった意味で使われているんですね。
やばす(やば過ぎる)というのもあり、2チャンネルやタレントの中川翔子さんらが発信しはじめたみたいですね。
広辞苑では「のめり込みそうである」という心境を表す意味合いが掲載されています。
「やばい」の語源は?
「やばい」の語源は「矢場」とは江戸時代の射的遊技の的場の意味。
表向きは遊技場だが、実際には売春の場所だったので「矢場」が危険な場所を表す隠語となり、さらに危険な状況を表す形容詞として「矢場い」が生まれたという。
もう一つは、泥棒が刑事のことを「やば」と呼んでいた。それの形容詞形が「やばい」である。ウィキペディアより
語源はなんとも後ろめたい場所の隠語ということで、決して肯定的な言葉には結びつきそうもない言葉を、芥川龍之介のように逆にインパクトのある「プラスの言葉」に変えてしまった若者たちに拍手を送りたいですね。
言葉の持つ影響力
いつの時代にも若い人(新人類=死語)はどんどん言葉や文字の書き方を変化させています。
例えば否定を意味する「全然」も今はすっかり普通に肯定的に使われるようになりましたが、最初に使い始めた人はかなりの勇気や気構えがあったのではないでしょうか?かの有名な芥川龍之介も小説『羅生門』で,次のように書いています。
「これを見ると,下人は始めて明白にこの老婆の生死が,全然,自分の意志に支配されてゐるといふことを意識した。」
通常、全然の後には否定が来るはずなのに、芥川は肯定文に全然を使いました。賛否を呼んだらしいのですが、これが後に言葉が生きている証拠となります。芥川はそれを見越して敢えて使ったのでしょう。
一昔前は手紙で高校生らが「丸文字」を流行らせ、パソコンのフォントにもなり、驚かせました。今では手紙だけでなく、堂々とテストの解答にも使われています。
おわりに
「やばい」という言葉を一番近い言葉に置き換えると「のめり込みそうである」とか「超ハマりそう」の意味になりますが、この先、更に想像を超えた言葉が進化して、生まれていくと思います。
「やばい」という一見マイナスのイメージを持った一つの言葉が、使う人の発想により、プラスの言葉に変化させるという言葉の神秘を感じることになりましたが、もちろん日本の伝統的な雅びな言葉も残していかなければいけません。
今回、このように一つの言葉がその時々の時代背景により、変化・進化していくのも、「生きた言葉」の意味と重要性を考えさせられました。
情報が飛び交うネット時代、次の世代に生きる人々に差別・いじめや宗教戦争が起こらない「プラスの言葉」が飛び交う世の中になって欲しいものです。