毎年行われる「読書感想画」のコンテストでは、選考者の年代や傾向の書かれた読書感想画攻略本などを積極的に活用して賞を狙う方もいるとか

でも、そんな裏技的なやり方で、たとえ賞をもらったとして今後その子の将来にどれだけ役に立つでしょうか?

アンフェアでもらった賞の後ろめたい気持ちは一生残るものです。

親がすべきことは、ただ闇雲にしなさいと言うのではなく、子供の読書への関心と絵を描く楽しさに気づかせることではないでしょうか。

そしていかに宿題と感じさせずに、必要最小限のアドバイスをして完成に導くこと。

この記事では読書感想画を描く上で重要なポイントとして本の選び方本を読む上での注意点下絵と塗り方のコツなど小学生・中学生それぞれの作成のコツを解説して参ります。

結論から申し上げると

感想画を進めるポイント・注意点

① 本を読んで一番心が動いて印象に残った箇所を一つだけ描く。・スゴイ・悲しい・うれしい・怖かったところなど。表紙・挿絵をできるだけマネしない。チラ見はOK。

② 材料を集めます。主人公とどんな登場人物(もの)がいたか、紙に描きだす。室内か屋外か、森なのか都会なのかなどの場所。夏・冬、昼間・夜など季節と時間帯は?

③ 画面構成を考えます。小さくまとまらずダイナミックに。簡単に丸や四角で描きます。

④ 下描きをする:鉛筆は力を抜いて薄くおおまかに線を引きます。消しゴムで消しても跡が残らないくらい。できるだけ消しゴムで消さないで!(紙が汚くなります)

⑤ 色塗りの注意点は
1:水の量(たっぷりの水を絵の具とよく混ぜて)に注意。紙の上でダマにならないように。
2:背景など広いところから塗る。遠くの山は薄く青くなるよ。空は大きい筆で横に滑らせながらすばやく塗ってね。濃かったら水を足します。
3:主人公は最後に丁寧に仕上げる。特に顔の表情を大事にして。
出来上がったら、十分に乾燥させてから新聞紙に挟み大きめに丸めます。
小さく丸めると、無数のシワが寄ってせっかくの作品が台無しになります。できれば画板に挟んで平たいまま提出するとベストです!

低学年(小学生)はあまり情報を入れても逆に集中・理解できないかも知れませんのでコレだけで十分かと思います。

次の章で詳しく説明していきます。

 記事の信頼性

この記事を書いている私は、元高校・中学校の美術非常勤講師(10年以上)。

現在はフリーのイラストレータ・造形作家として活動中。

 読者さんへのメッセージ

本記事では「これから読書感想画を子供に描かせたいけど、どこから手をつけていいか分からない」という親御さんに向けて書いています。

この記事を読むことで、「何から始めて、どんなことに注意して進めて行けばいいのか」をイメージできるようになると思います。あくまでもお子さんのアシストを目指してくださいね。

あまり尻を叩きすぎると、いい才能も開花しなくなるので。
逆に読書嫌いになっては、本末転倒ですよね。

読書感想画の目的を知っておく

そもそもなぜ読書感想画が必須の宿題になっているのでしょうか?

夏休みの思い出の絵」とか「読書感想文」でもいい訳ですよね。

その答えは
1、長期の休みを利用して読書に親しむこと。
2、本の中で一番心を動かされたところを「自分なりの表現手段で絵・形にする」という「自己表現の育成というめあて
があるからなんですね。

読書と絵を通して表現力を身に着ける習慣をつけさせるのが最大の目的ですが、これが課題のハードルを高くしているみたいですね。

読書感想画小学生と中学生の違い

小学生低学年の場合

初めての感想画ということもあり、いくつかの指定図書を読み聞かせて、その中から興味・関心の強かった本を選ばせるのをおすすめします。

小学生は挿絵や表紙絵で読みたい本かどうかを決めてしまうので、この時点で挿絵のイメージが固定してしまうのです。

このイメージの固定を予防する方法は「読み聞かせ」なります。

親が読んで聞かすことで、子供は頭の中でイメージを作り上げていきますので、自分で発想したオリジナルの絵になるというわけです。

小学生中・高学年の場合

中・高学年になるに従い、興味関心が増え、自分で本を選びたいとい欲が出てくると思いますので、いろんな選択肢を持たせるようにしましょう。

何を読んでいいかわからないお子さんには引き続き「課題図書」を勧めましょう。

本によっては感想画になりにくい本もあるので、「課題図書」を選んだ時点でこの悩みは解消されるでしょう。

「課題図書」のデメリットはライバルの多さにあることは覚悟しないといけません。

構図や彩色の工夫で一味違う絵にしていきましょう。

中学生の場合

中学生の場合はどちらかと言うと本の深読み合戦と言っても過言ではありません。

何度もしっかりと本を読み込み、「登場人物」「風景」「時間」などシチュエーションを思い浮かべ、自分独自の絵画世界を作り上げていくといいでしょう。

小・中学生の共通するポイントは「いかに楽しみながら作品作りができるか」つまりモチベーションの維持になると思います。

描く上でのチェックポイントを一つ一つクリアーしてモチベーションを上げながら着実に進めていきましょう。

Step1:本選び&本読み・材料集め

夏休みと言わず、普段から本に親しむ習慣を付けておいて、描く直前に一番関心があるものを数冊の中からこれだと思う本を選びたいですね。

スポーツ少年団・部活などで忙しいお子様なら、スポーツに特化した本に一番趣味・関心が深いと思います。

興味のあるものは自然に入り込み、感情が込めやすくなります。

注意すべきことは、「本のご丁寧なまとめ集」なんかがネットでも見れますが、そんなのを見ても心が動かないので参考にしないように。

本が決まったら、しっかりと読み込んでいきますが、ここで必ず途中気になったところや心が動かされたところには「付箋」を貼って簡単なメモ書きをしておくと後から探すのに時短にもなります。

具体的には「スゴイ」「かわいそう」「えらい」と感じたところです。

最近若い人の言葉で「エモい」と言うのが流行っていますが、エモい=エモーション、まさに「心を動かされた瞬間」を絵にすることで見る人に伝わる絵になります

読みながら同時にノートか白紙に「登場人物名」「いつごろなのか」「どこなのか」頭に浮かんだ「気持ち」や「重要な言葉=キーワード」などを忘れないうちにメモ又は、簡単な絵にしていきましょう。

まとめると
1、「誰(主人公)が何かをして、一番心境の変化が高まった時=(自分が)心を動かされた瞬間」
この場面を絵にしてください。心に浮かんだ場面でもいいです。

2、読みながら材料(キーワード)を集めること。作者が一番言いたいことにもつながります。

これで、本読み&材料集めの終了です。

Step2:下絵の構想を練る:まずアイディアスケッチから

今まで何人もの子どもたちを見てきて、よくある失敗が「下絵描き」です。

低学年はほぼ全員、高学年でもやってしまうのが、いきなり画用紙に描いていく児童が圧倒的に多いですね。

画用紙の上で思いつくままを描いては消し、消しては描き直していくうちに紙は汚れ、テンションが下がります。

つまり、全体の構成が出来上がっていないのに下絵を描いてしまうのは、あまりにも無謀、かえって時間がかかります。

本読みの段階に付箋をしたところを繰り返し読み、何パターンか場面を絵コンテ風に簡単に描きます。

この時点では細かい描写は必要でなく、登場人物と背景の位置など「何をしている場面なのか」大まかな構成をいくつか考えます。

 

メモ書きを元にどんな画面構成にすれば自分の思いや感動が表現できるかを検討し、A4くらいの小さい紙などにアイディアスケッチします。

いくつかのアイディアスケッチを元に必要な要素を絞り、場面を組み合わせたり、いらない要素を消去したりして自分が最も伝えたい部分を絞り込んだ構成にします。

低学年は早く形にしたい子もいるので、この作業は飛ばしていきなり書き始めてもいいかもしれません。

(低学年は自分の思いつくまま自由に描かせるのもありです。)

Step3:下絵の構図を考える2

登場人物、時代、時、物、建物など大まかな構成が決まったら、次は構図を考えます。

いきなり画用紙に描いてもいいのですが、ここが大事なところなので、同じ大きさの別の紙の上で構図を考えると逆に作業が早いでしょう。

顔や手など細かい部分は描かずに全体のバランスを考えながら、アウトラインを丸や四角で簡単に描きます。

この時見る視点により構図が大きくわかるので、以下のアングルを参考にしてください。

  • 普通の描き方:同じ目線で描く   
  • 鳥瞰図:飛ぶ鳥が見下ろすように俯瞰から描いてみる。    
  • 下から見上げる:虫など小さいものが下から覗き込むようなアングルから描いてみる。    
  • 遠近法:主人公と背景、登場人物の大きさを変え、動きと距離感を出します。  

以上、これらを組み合わせてもいいでしょう。大きさの工夫と強弱を出すように。

この画面構成の段階が最も重要で、絵の出来栄えがここで決まると言ってもいいでしょう。

(低学年は自分の思いつくまま自由に描かせてもいいでしょう。)

Step4:画用紙に下描き

実物大の用紙にラフスケッチができたら、いよいよ本番の画用紙に下描きしていきます。

失敗しない描き方は最初から硬い鉛筆でガリガリ描いて行かず、2Bくらいの軟らかい鉛筆で力を抜いて、全体のバランスを考えながら、アウトラインを引きます。

薄く引いたラインは消しゴムで消さなくても、描きこんでいくうちに自然に消えていきます。

バランスを考えて大まかな下描きができたら、顔、からだ、背景など細かく描いていきます。ポイントはすぐ消しゴムで消さないこと。

濃い線で一発で決めようとせずに、薄い線をいくつも引いていくとやがて形が整ってきます。(薄い線は色を塗れば消えていきます。)

Step5: 色塗りのポイント

背景までしっかり下絵を描き終えたら、いよいよ色塗りです。

背景を描く

背景は水を多めに混ぜて塗ると薄く後ろに行きます。

反対に水が少ないと濃くなり、人物よりも前に出てきて遠近感がなくなります。

通常薄い色の背景から一気に塗り、乾いた後に手前の登場人物や近景を細かく描いていきます。

空など広い面積を塗る場合、ムラにしないためには、初めは水だけを大きな筆で塗り、その後に雲などをよけるようにして青色を付けていくと自然な空になります。昼間の青空の青はスカイブルーがおすすめです。夜の空は紺色がいいでしょう。

上部が鮮やかな青で、地面に近いほど空は白っぽくなります。空や地面は横に塗り進めていきます。

塗り重ねはにじまないように。乾ききってない色の近くは後回し、ドライヤーで乾かしながらだと作業が早くなります。

コントラスト(強弱)を考える

伝えたいものを力強く描くなど、主人公を引き立てる色遣いを考えます。
手前のものははっきりと、奥のものはうっすらとさせるとメリハリが出ます。

色を殺す(言葉が物騒ですが、自然な色合いにという意味)

絵の具箱の原色をそのまま使うとけばけばしくなる場合があります。

例えば木々を描く場合など、えのぐの緑色は強すぎます。そこで黄色や黄土色あたりを少し混ぜると自然な色合いになります。

土の色、空の色、木々の色、壁の色など単調にならないように。陰など色んないろ色合いを重ねてみましょう。

光と陰影

ベタ塗りで終わらない:全てのものには陰影があります。

明るいところ、暗いところ少なくとも2色以上に色を塗り重ねてみて!びっくりするほど立体感が出ますよ。

輪郭

輪郭は軽く:自然の物には本当は輪郭線はありませんが、細い面相筆で輪郭をとると引き締まります。

真っ黒で太い線だと立体感がなくなります。

こげ茶あたりの細い線で息を殺して引いてみてください。背景から飛び出すように主人公が前に出てくるでしょう!

外に出歩けない。こんな時期には親子で絵画(水彩画)の基礎を学んでみるのおすすめです。

仕上げ

白い部分は絵の具の白を使わずに画用紙の白を活かして基本塗らないのが水彩画の特徴です。

時間が省けるのと、水彩のみずみずしさが出てきます。

全てを塗り終えたと思ったら、一度絵から少し離れたところで見てみましょう。

背景と人物のバランスや色の物足らなさ、主人公の表情などをチェックします。

絵が出来上がったら、数時間乾かしましょう。
その間に、パレットなど絵の具セットの片付けを自分でさせます。

特に筆はよく水で洗ったあと、乾いた布で水気を拭き取り、自然乾燥させます。

透明なケースは毛先が曲がるので、いりません。筆が完全に乾いてからケースに入れます。

出来上がった絵は一度親に見せてから、学校に持って行きましょう。
ここでぐるぐる巻きにして輪ゴムで止めるのはいけません。

2枚の新聞紙に挟んで、余分な新聞紙を折ってから軽ーく丸めます。直径が15cmくらいでしょうか。
いくつかセロテープで止めます。

こうすることでシワが寄りにくくなります。
せっかく苦労して描いた作品、大切に扱って提出しましょう!

「読書感想画」の描き方のまとめ

小学生も中学生も読書感想画を描く基本は同じですが、小学生は細部にこだわらない大胆さと色彩・タッチのバリエーション

中学生・高校生は大胆な構図でありながら人物のこころの動きを緻密な描きこみで表現・技法あたりにそれぞれ気を付けると更に深みのある感想画になってくると思います。

最後に更に人と違う絵にするには光と陰を意識して人、モノ、背景に明るい部分と暗い部分を描き分けることができると最高です。

モノにあたる光と陰影を意識して描き分けることで、立体感や色彩が豊かになるでしょう。生命感が宿ってきます。

以上、今日は読書感想画を描く上で注意する「本の選び方」「本を読む上での注意点」「下絵の描き方」など小学生・中学生それぞれの作成のポイントを解説しました。

一番のポイントは下描きの前の画面構成に時間をかけることでしょうか。けっしていきなり画用紙に下絵を描かないように。

ちなみに金賞、銀賞は審査員の好みや考え方によって違います。

選ばれるかどうかは時と人の運、そのくらいの気持ちでチャレンジしていきましょう。

あなたが描いた絵は正真正銘世界に一枚のオリジナルの絵ですから誰がなんて言ってもあなたにとってかけがえのない一枚の絵なのです!

「読書感想画コンクール」は、「読書の感動を絵画表現することにより、児童・生徒の読書力、表現力を養い、読書の活動を振興すること」を目的に掲げ、近畿学校図書館連絡協議会と毎日新聞社との共催で、1983年に近畿地域において創設されました。
86年、実施地区が関東に拡大されたことを契機に、独自の指定図書の選定を開始。また、これまで後援であった全国学校図書館協議会が共催となりました。
89年には、関東・北信越の一部・東海・中国(山口県を除く)・四国地域に拡大し、「読書感想画中央コンクール」として一本化されました。
そして第25回から、北海道も加わり、38都道府県で実施しています。
第26回からは、文部科学省の後援を受け、最優秀作品に文部科学大臣賞が授与されることになりました。

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